RIO DE JANEIRO / CACIQUE DE RAMOS / 1980s

BAND 07 / 10

Pagode

輪になって歌う場から、全国へ。

カヴァキーニョ、バンジョー、タンタン、パンデイロ、手持ちのヘピーキ。パゴージは、人が集まるサンバの場と、そこから育った音楽の両方を指します。

カシーキ・ヂ・ハモスで集まる人々
パゴージの重要な拠点Cacique de Ramos

Vianna2019 / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons

01ABOUT

WHAT IS PAGODE?

恋愛曲だけでも、一つの固定様式でもない。

「パゴージ」は、もともとサンバを演奏し、歌い、食事をしながら人が集まる会そのものを指す言葉です。

1970年代末から80年代初め、リオ北部のカシーキ・ヂ・ハモスに集まった演奏家たちが、新しい楽器と演奏法を発展させました。フンド・ヂ・キンタウや周辺の作曲家が録音へ進み、パゴージは全国へ広がります。

1990年代には、恋愛を中心に歌い、鍵盤やポップな編曲を使う pagode romântico が大流行しました。1980年代のホーダと1990年代のポップ型は違いますが、どちらもパゴージの歴史に含まれます。

RODA+CORO+PERCUSSÃO
02PLACE & MAP

OLARIA / RAMOS / ZONA NORTE DO RIO

北部のクラブの輪が、ブラジル中の歌になった。

1980年代型パゴージの重要拠点Cacique de Ramosは、リオ北部オラリアにあります。観光地として知られる南部ではなく、鉄道沿線の住宅地と労働者文化の中でホーダが育ちました。

タマリンドの木の下の集まりでは、演奏家、作曲家、歌い手が近い距離で新曲を試し、互いの作品を覚えました。Beth Carvalhoらがその音を録音へつなぎ、地域のホーダは全国市場へ入ります。

1990年代のpagode românticoはリオだけの現象ではありません。サンパウロのRaça Negra、ウベルランジアのSó Pra Contrariarなど、別の都市と制作回路がポップな編曲を発展させました。

  • Cacique de Ramos / OlariaFundo de Quintalと多数の作曲家が集ったホーダの拠点
  • Subúrbio cariocaサンバ、クラブ、鉄道沿線の地域文化が結ばれた空間
  • São PauloRaça Negraなどpagode românticoの大市場
  • Uberlândia / MGSó Pra Contrariarが生まれたミナス・ジェライス州の都市
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地図 © OpenStreetMap contributors。印は一つの代表地点であり、文化の範囲を一点に限定するものではありません。

03SOUND

LISTEN CLOSER

何を聴けば、
違いが分かる?

近い距離で輪になって演奏する感覚が出発点です。ただし現在の編成はアコースティックに限らず、鍵盤や電子的な制作も使われます。

01RODA

輪の中の演奏

演奏者と聴き手の境界が薄く、歌、手拍子、合唱が行き来します。テーブルを囲む身近な場から大規模な公演まで広がりました。

02NOVOS INSTRUMENTOS

新しい打楽器とバンジョー

タンタン、ヘピーキ・ヂ・マォン、カヴァキーニョ型ネックのバンジョーが、低音、切れ味、推進力を加えました。

03VOZ / CORO

独唱とコーラス

一人の歌に周囲が応え、サビでは全員が声を重ねます。歌詞は日常、友情、喜び、恋愛など幅広い題材を扱います。

04HISTORY

ROOTS / PLACES / CHANGE

歴史を、
写真と映像でたどる。

集まりを表した言葉が、Cacique de Ramosのホーダ、録音、ロマンティック系、ライブと配信へ広がるまでをたどります。

  1. まず、サンバを囲む場だった

    「パゴージ」は最初から固定したジャンル名ではなく、食事や会話を交えながらサンバを演奏する集まりも指しました。ホーダは曲を試し、覚え、作曲家と歌い手をつなぐ場であり、後の音楽様式より長い歴史を持ちます。

    2017年、リオ・デ・ジャネイロで輪になってサンバを演奏する人々
    Tijucaのホーダ・ヂ・サンバ(2017年撮影。初期パゴージの記録写真ではない)

    Lgjunior / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons

  2. カシーキ・ヂ・ハモスが生まれる

    リオ北部でカーニバル団体Cacique de Ramosが創設されました。やがてオラリアの本拠地は、地域や所属を越えてサンビスタが集まる場所になります。パゴージ史は舞台上のバンドだけでなく、この社会的な拠点から始まります。

    2022年に撮影されたカシーキ・ヂ・ハモスの外観
    Cacique de Ramos(2022年撮影。1961年当時の写真ではない)

    Vianna2019 / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons

  3. タマリンドの木の下から録音へ

    Caciqueの水曜のホーダには、作曲家、歌手、奏者が集まり、新曲を交換しました。Beth Carvalhoは1970年代末から周辺の作品と演奏家を自らの録音へ招き、リオ北部のホーダと全国の聴衆を結ぶ重要な媒介者になりました。

    2004年に撮影された歌手ベッチ・カルヴァーリョ
    Beth Carvalho(2004年撮影。1970年代末の現場写真ではない)

    Ricardo Stuckert / PR / CC BY 3.0 BR / Wikimedia Commons

  4. フンド・ヂ・キンタウが音を定着させる

    Fundo de Quintalは1980年に最初のアルバムを発表。タンタン、ヘピーキ・ヂ・マォン、カヴァキーニョ型ネックのバンジョーを生かした編成を録音で広めました。周辺からAlmir Guineto、Arlindo Cruz、Zeca Pagodinhoらも台頭します。

    2013年に演奏するフンド・ヂ・キンタウ
    Fundo de Quintal(2013年撮影。1980年のデビュー当時ではない)

    Leob2 / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons

  5. パゴージ・ホマンチコが別の大市場を作る

    恋愛を前面に出す歌詞、鍵盤、ポップな編曲を備えた系統が全国的な産業へ成長しました。Raça Negra、Só Pra Contrariar、Exaltasambaなどは1980年代型のホーダと異なる音を作りましたが、単なる「商業化」や「堕落」と片づけると、人種・階級をめぐる受容史を見失います。

    2014年にステージで演奏するソー・プラ・コントラリアール
    Só Pra Contrariar(2014年撮影。1990年代当時の写真ではない)

    Olimor / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons

  6. サンバ・ヂ・メーザとライブ文化

    テーブルを囲む近い演奏を前面に出すsamba de mesaと、大規模なライブ、DVD、テレビが並行して発展しました。Grupo Revelaçãoなどが新しい聴衆を獲得し、1980年代のレパートリーも次世代のホーダで歌い継がれました。

    2010年に公演するエザウタサンバ
    Exaltasamba(2010年撮影)

    Sérgio Savaman Savarese / CC BY-SA 2.0 / Wikimedia Commons

  7. 複数の系譜が同時に続く

    Caciqueにつながるホーダ、ロマンティック系、ポップや電子制作を取り入れる新世代が、配信とライブの両方で共存しています。「本物」を一つに決めるより、誰がどの場で演奏し、どの系譜を引き受けているかを見る必要があります。

    2012年に演奏するグルーポ・ヘヴェラサォン
    Grupo Revelação(2012年撮影。現代パゴージの一例)

    TV Brasil / CC BY 3.0 BR / Wikimedia Commons

05PEOPLE

KEY FIGURES / GROUPS

この音を広げた人たち。

名前だけを覚えるのではなく、どの時代・土地・現場で、その音を変えたのかまで紹介します。

01GROUP / INNOVATION / CACIQUE

Fundo de Quintal

フンド・ヂ・キンタウ

Cacique de Ramosのホーダから生まれ、1980年に初LPを発表。タンタン、ヘピーキ・ヂ・マォン、カヴァキーニョ型バンジョーを組み合わせ、低音と鋭い刻みを録音へ定着させた共同体の成果です。

02SINGER / MEDIATOR / RECORDING

Beth Carvalho

ベッチ・カルヴァーリョ

1970年代末、Cacique周辺の曲と演奏家を自らの録音へ招きました。《De Pé no Chão》などを通じ、郊外のホーダと全国のレコード市場を結んだ媒介者であり、単なる「発見者」ではありません。

03VOICE / BANJO / COMPOSER

Almir Guineto

アルミール・ギネト

Fundo de Quintal初期メンバーで、サンバ用に調整したカヴァキーニョ型バンジョー、荒く力強い声、作曲で新しい音を形づくりました。ソロ期にも、ホーダの応答と庶民的な語り口を保ちました。

04BANJO / CAVAQUINHO / COMPOSER

Arlindo Cruz

アルリンド・クルス

Fundo de Quintalで長く活動し、バンジョーとカヴァキーニョ、歌、膨大な作曲で1980年代以後のパゴージを支えました。ホーダの共同性を保ちながら、録音・大舞台・他歌手への作品提供を結びました。

05VOICE / STORYTELLING

Zeca Pagodinho

ゼカ・パゴヂーニョ

Caciqueのホーダから1980年代に登場し、日常会話のような発音、ユーモアと哀感を同居させる歌で全国的人気を得ました。《Deixa a Vida Me Levar》だけの「気楽な人」像に閉じないサンバの語り手です。

06GROUP / ROMANTIC PAGODE / SÃO PAULO

Raça Negra

ハッサ・ネグラ

サンパウロ東部から登場し、1990年代にエレキギター、鍵盤、滑らかなコーラスを用いた恋愛中心のパゴージを全国化しました。Cacique系と音は異なりますが、黒人労働者層のポップ表現として同じ歴史の一部です。

06SONGS

SONGS TO START

まずは、
この曲から。

1980年代のホーダを支えた曲と、1990年代のロマンティック系を並べることで、言葉の幅が分かります。

  1. 01小編成の新しい音色

    Do Fundo do Nosso Quintal

    Fundo de Quintal

    輪の内側から立ち上がる独唱とコーラス、タンタンの低音、バンジョーの鋭い刻みが一体になります。歌詞だけでなく、それ以前のサンバ録音と異なる小編成の音色をつかむ一曲です。

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  2. 02声とコーラスの励まし

    Conselho

    Almir Guineto

    落ち込む相手へ「頭を上げて闘え」と呼びかけ、周囲のコーラスが言葉を押し出します。Almir Guinetoの力強い声とバンジョーの推進力から、初期パゴージの集団感を聴けます。

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  3. 03感情を大合唱へ反転

    Vou Festejar

    Beth Carvalho

    別れた相手の苦しみを祝う逆説的な歌詞が、独唱と集団の応答によって大合唱へ変わります。Beth CarvalhoがCacique周辺の作曲家・奏者と全国の聴衆をつないだ転機も聴けます。

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  4. 04苦労を含む日常の語り

    Deixa a Vida Me Levar

    Zeca Pagodinho

    苦労を経験した語り手が運命と感謝を歌うため、単なる無責任な楽観ではありません。話すような歌とコーラスの自然な受け渡しに、Zeca Pagodinhoの語り手としての魅力が表れます。

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  5. 05pagode romântico

    Cheia de Manias

    Raça Negra

    エレキギターの反復、鍵盤、整ったコーラスが恋愛の未練を前面に出します。1980年代のCacique系と聴き比べると、編成、録音、市場、歌詞の重心がどう変わったかが具体的に分かります。

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  6. 06MPBをホーダのグルーヴへ

    Sina

    Grupo Revelação

    Djavanの楽曲を、カヴァキーニョの刻み、打楽器、客席と交わすコーラスによってパゴージのライブへ編み直した演奏です。原曲の旋律を保ちながら、Grupo Revelaçãoらしい輪の一体感と推進力へ変わる過程を聴けます。

    曲を聴く
07CONTEXT

BEYOND THE SHORTCUT

一言で決めつけない。

入口の説明だけで文化を単純化しないために、次の点を押さえておきます。

  1. 01

    パゴージを1990年代の恋愛ソングだけに限定すると、カシーキ・ヂ・ハモスと1980年代の歴史が消えてしまいます。

  2. 02

    サンバと無関係な別ジャンルとして切り離すことはできません。パゴージはサンバの集まりと演奏実践から発展しました。

  3. 03

    タンタンやヘピーキ・ヂ・マォンが昔からすべてのサンバに存在したわけではなく、特定の演奏家たちが広めました。

  4. 04

    現在のパゴージには鍵盤、シンセ、ポップ的な編曲もあり、すべてをアコースティック音楽とは言えません。

AT TUFS BRASIL KENKYUKAI

ブラ研の
Pagode

ブラ研では、カヴァキーニョ、ギター、パンデイロ、タンタンなどを囲み、歌とコーラスを行き来させながらパゴージを演奏します。ホーダの親密さを、ステージでも観客と共有できる形を目指しています。

10バンドの一覧へ 見学について聞く
08SOURCES